昇格試験対策・経営戦略方針立案の型を5分で習得

幹部職への昇格試験で出題されるケーススタディやインバスケットでは、架空の経営陣からこれからの事業戦略についての意見を求められることがあります。企業の未来を左右するような重要な案件を小一時間ほどで紙とシャーペンを使って1人で考えるようなことは実際にはないと思いますが、重要度が高い案件なので(緊急度は低いけど)昇格試験ではいい感じに戦略立案して、幹部職に必要なスキルを持っているところを示したいところです。ビジネススクールに通っていない人や日常業務に追われて昇格試験の準備が進んでいない人にとって、試験の制限時間内で戦略立案するのはとても大変なことなので、事前に自分なりの型(パターン)を持っておくことをお薦めします。ここでは民間企業で7年以上の管理職経験のあるDr. 謙くんの型を無料ですべて紹介しますので、最低限の知識を身に付けてもらえたら幸いです。試験結果等を保証するものではございませんので、ご了承ください。平均的な日本人なら、あと4分で最後まで読めます。

Dr.謙くんの5ステップ

  1. 企業理念を明示して鼓舞
  2. 自社の強みを強気に記述
  3. 外部環境の脅威を弱気に記述
  4. 挑戦的な方針を提案
  5. タスクを決める

この5ステップを仮の設定で文章にしてみた場合、要点は次のようになります。

当社の企業理念は(1. 人類を幸福にすること)であり、これまで(2. 中年層をターゲットにしたサービスを展開しており、この領域においては最大規模のユーザー数を持っている)という強みを活かして事業を発展させてきた。しかしながら、(3. 他社の参入)という外部環境の脅威を受け、今後は苦境に立たされることが予想される。そこで、(4. 高齢者をターゲットにした新しいサービスを開始してより多くの人を幸福にすること)を提案します。そのための計画は次の通りです。(5. 第2週までに企画部が高齢者のニーズを満たすサービスの要件を定義し、第4週までに開発部がプロトタイプを制作し、第6週までに営業部がリリースして認知度を高め、明確になった課題を企画部にフィードバックします。)

(かっこ)の部分は、試験問題の設定を分析して作文することになります。ステップ2と3ではSWOT分析をしています。SWOT分析とは、社内環境を強みと弱み(Strength & Weakness)に分け、社外環境を機会と脅威(Opportunity & Threat)に分けてから組み合わせてみるフレームワークで、MECEで(モレなくダブりなく)分析することができます。強み(S)と脅威(T)を組み合わせるとドラマチックな戦略を描きやすいので、私は好きですが、弱み(W)と機会(O)を組み合わせても構いません。組み合わせは全部でS or W × O or T の4パターンありますが、限られた試験時間内で4パターンすべてを検討するのは大変で、他の案件も処理しないといけないので、事前に自分の得意なパターンを持っておいた方がスムーズです。試験ではMECEであることを求められますが、モレがあったとしても「・・・SWOT分析をした結果の詳細は後日ご紹介しますが、ここでは私が最も重要だと考えたS×Tについてのみ言及します。・・・」と記述しておけば、モレがない感じを装えるかもしれません。(バレるかもしれませんが)

ステップ1. 企業理念を明示して鼓舞

自分が所属している組織の理念やミッションが、もし本文中に記載されていたらラッキーです。遠慮なく引用しましょう。もし明記されていなかったら、未来を想像して理念を言語化することになります。例えば、スポーツ教室を運営している企業なら、スポーツの振興を通じて人々に感動を提供するとか、リサイクルショップを経営している企業なら、限りある資源を有効活用して持続可能な地球環境を実現するとか、収益を得ることだけを最終的なゴールにするのではなく、そのゴール地点から見えてくる世界を想像・妄想して、大胆に言語化してみましょう。この作業によって、経営層と同じ視座・視点を持つことができるので、日常業務でも意識してみましょう。

ステップ2. 自社の強みを強気に記述

自社の強みが、もし本文中に記載されていたら、遠慮なく引用しましょう。もし明記されていなかったら、手元にある情報に基づいて自社の強みを明示することになります。自社の強みを自虐的に否定している中堅社員を実際に目にすることがありますが、試験では自己肯定感を高めて分析しましょう。例えば、とある事業を100年継続していたら「古臭い」ではなく「先駆者」と表現したり、他社の製品よりもスペックが劣っていたら「技術力が弱い」ではなく「営業力が強い」と表現したり、市場シェアが低かったら「顧客数が少ない」ではなく「顧客一人ひとりと向き合う営業スタイル」と表現したり、ポジティブな言葉に言い換えてみましょう。どんな状況でも強みだと表現できるように、表現の幅を広げておきましょう。

ステップ3. 外部環境の脅威を弱気に記述

自社が直面している脅威を5つの要素に分類してみる方法を「ファイブフォース分析」と言います。自社の状況を把握するために有効なフレームワークになるので、次の5つをすべて覚えておきましょう。

  • 新規参入の脅威
  • 代替品の脅威
  • 買い手の交渉力
  • 売り手の交渉力
  • 業界内の競合他社

ファイブフォース分析のほかに、外部環境を分析するフレームワークとして「PEST分析」があります。PEST分析は、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4つに着目する手法です。ちなみに私はPEST分析よりファイブフォース分析の方が有効だと考えております。外部環境は激しく変化しており、国際的な対立が起こったり(P)、円安が加速したり(E)、多様性の時代になったり(S)、生成AIが登場したり(T)、PEST分析の信頼性の劣化が早いので、ファイブフォース分析の方が安定して使えます。

ステップ4. 挑戦的な方針を提案

ステップ2で言及した自社の強みを活かして、ステップ3で言及した脅威に立ち向かい、ステップ1で明示した理念を実現する方針を決めましょう。ステップ2と3の内容が抽象的だと、方針を定めるのが難しくなります。ステップ2か3に戻って情報を分解してみましょう。「市場シェアが低い」ではなく、どのセグメントでの市場シェアが低いのか(中年層?高齢者?)、「競合他社の参入が激しい」ではなく、他社の何が脅威なのか(技術力?営業力?)深掘りしてみましょう。現実的な計画を立てて実行するという考え方ではなく、仮説を立てて検証するという考え方を持つことをお薦めします。

ステップ5. タスクを決める

最後のステップ5は楽勝です。ステップ4で決めた方針で、いつまでに誰が何をするのか記述しましょう。

以下、参考図書です。リンクはAmazonアフィリエイト広告になりますが、実際に読んだ私なりの推薦図書です。ご参考になれば幸いです。

あと、幹部職試験では GMAP が実施されることがあります。以下の教科書・問題集をご参考にしてください。

最後に、「インバスケットのコツ 5つのポイント」「幽☆遊☆白書の蔵馬の戦略立案力」を解説した記事も本ブログで載せています。ご参考まで。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です